コイルの数(四角い箱のような部品)=フェーズ数と書いているレビューサイトが多いが、どうやら必ずしもそうではないらしいので保存用として記事にしておく
自分用メモ用記事のため乱雑です

私はマザーボードを購入する際には色々なレビューサイトを回るのですがその中で
海外のVRMリストを見ていると、どうも見た目のフェーズ数(チョークコイル)と実際のフェーズ数に差があるマザーボードが結構あるんですよね
特にAsrockの下位モデル

なぜこのような現象が起きているのか
私がフェーズに対して疑問を持ったのはここからです
今回はそれについて記事にしたいと思います

まずフェーズというものの概念に関して

フェーズというのは四角い箱(チョークコイル)ではないということです

よくカジュアルなマザーボード解説サイトなどではコイルの数をフェーズ数としていますが実際はそんな単純じゃないです
私自身そのようなサイトを見てチョークコイルの数=フェーズ数と勘違いしていましたが、海外のサイトなどでフェーズについて詳しく解説されている物を見るとコイルの数といったような単純なものではないということがわかります

そして情報を色々収集してるうちになんとなく見えてきたものが、市販されているマザーボードのVRMの構成は多きく分けて約4つの種類に分けられるということです

その構成から、本当のフェーズの数がわかるようだったので今回はそれについて書いていきたいと思います

本当のフェーズ数を見極めるためにはまずそのフェーズの構成を見極めます
そしてフェーズ構成を見極めるためにはまずフェーズコントローラーを探します

というのも、コントローラーはフェーズを制御するチップなのですがモノによって制御できる数に制限があるのです

14フェーズ扱えるコントローラーもあれば8フェーズしか扱えないコントローラーもあったりといった感じです

例えば、コントローラーの性能的には8フェーズまでしか扱えないのに見た目上のフェーズが12個搭載されているようなマザーボードがあった場合、それは見た目だけのフェーズ(コイル)で増やしている可能性があるということです

そういうわけで最初にコントローラーから判別すると楽です

そしてそこから大きく2つに分けます

コントローラーが扱える数以下のフェーズを搭載したマザーボード

コントローラーが扱える数を超えるフェーズを搭載しているマザーボード

そして、後者を更に3つに分けます

つまり以下のような感じです

1コントローラー≧コイルの数

2コントローラー<コイルの数
1ダブラー搭載型
2並列型
   3偽フェーズ型


これら4種類を順に見ていきたいと思います

1コントローラー≧コイルの数

コントローラーが扱えるフェーズ数と見た目のフェーズ数(コイルの数)に矛盾がないマザーボードです
この場合、そのマザーボードのフェーズは、見た目上のフェーズと真フェーズの数が同じと考えて問題ないと思います
見た目上Vcore用フェーズが4以下の下位モデルのマザーボードは、ほとんどこのタイプですが
10フェーズ以上でこの構成のボードはGIGABYTEのハイエンドモデル以外では見つけられませんでした
理由としては、多フェーズを扱えるコントローラーは値段が高い事が大きいようでした

コントローラー≧コイルの数型の例
多フェーズの場合やはり値段はかなり高めになってしまいます



GIGABYTE ギガバイト X570 AORUS XTREME E-ATX マザーボード [AMD X570チップセット搭載] MB4786


GIGABYTE ギガバイト X570 AORUS MASTER ATX マザーボード [AMD X570チップセット搭載] MB4787


では、上記以外の構成はどうなっているのでしょうか
つまりコントローラーが扱えるよりも明らかに多いフェーズが搭載されている場合です

2-1ダブラー搭載型

このタブラー搭載型はミッドレンジで多数のフェーズを搭載したマザーボードでよく見るタイプです
有名なものだとAsrock Taichiシリーズ等
個人的にも現在使用しており気に入っています

このTaichiシリーズは以前から同価格帯のマザーボードと比べて過剰なほどのフェーズを搭載し、高耐久を売りにして人気のあるマザーボードでしたが、あれだけのフェーズを搭載するにはよほどのコントローラーでないと扱えないはずです
しかし、Taichiに搭載されているコントローラーではそこまで多くのフェーズは扱えません
では見せかけだけのフェーズなのかというとそういうわけでもありません

ではどのようにしてフェーズを増やしているのか

そこで登場するのがダブラーです
これを使用することで、コントローラーが制御できる数を超えてフェーズを増やすことができるのです

先程、コントローラーが制御できる数以上のフェーズが載っている場合は見た目だけの可能性があると言いましたがこのダブラー型はそうではないタイプです

X470までのハイエンドモデルはこのダブラーを採用しているものが非常に多いことからも
信頼できる構成と思われます
mosfetの近くに小さいチップが付いているのでそこから判断できます
裏側についていることが多いです


ダブラー型のマザーボードの例




GIGABYTE ギガバイト X570 AORUS ELITE ATX マザーボード [AMD X570チップセット搭載] MB4789


MSI MPG X570 GAMING EDGE WI-FI ATX マザーボード [AMD X570チップセット搭載] MB4781



ASRock AMD X470チップセット搭載 ATXマザーボード X470 TAICHI


コントローラーの性能を下げることで多フェーズでもかなり価格を抑えることができています

ただ、これはダブラー搭載モデル以外にも言えることですが、フェーズが多くても肝心のmosfetの性能が低い場合は、必ずしも高性能とは限ら無いので注意が必要です
上記のMSIの製品がその例に当たるかと思われます

海外のVRMレビューサイトではここまでを真フェーズ(True Phase)、次に話すものからを仮想フェーズ(Virtual Phase)(いわゆる見せかけだけのフェーズ)と称する事が一般的なようでした

2-2並列型

安い割に見た目のフェーズ数が多くて「コイルの数=フェーズ数」と思っているユーザー(過去の自分)からは人気のマザーボードが多いですが実際のところはどうなのか

コントローラーに関しては高性能なものは搭載されておらず、見た目のフェーズと同じ数のものは明らかに扱えません
ではダブラーは使用されているのかというとそうでもなく、これらのフェーズは並列で繋がれていました

そして並列で繋がれている場合、同じフェーズを分割しているだけなので1フェーズしかありません
見た目上の半分しかフェーズはないです

並列で繋がれているものは8フェーズに見えても実際は4フェーズということです
3スタック構成の場合は12フェーズに見えても4フェーズです

価格が低いのに見た目のフェーズ(コイル)が異様に多い場合はまずこのパターンを疑ったほうがいいと思います

ダブラー型と比べても耐久性で劣るマザーボードがほとんどなので安い以外にこれを買う理由はないと思います


しかしASUSはX570からハイエンドでもこのタイプを採用しており、VRMの性能面でも他メーカーのダブラー型とあまり差は無いようなので、必ずしもダブラータイプより劣った製品とは言えないのが難しい

まあ、それでもASUSのX570の世代に入ってからの話なので、X470の世代以前の型落ちマザーボードを購入するのなら並列=低品質と考えて差し支えないでしょう

この並列タイプに関しては、日本の有名なPCパーツレビューサイトなどでも見た目上のフェーズを真フェーズと勘違いしているサイトが多く、この記事の一番最初に書いた疑問はこの例に見事に当てはまっていました。

コントローラーが制御できる数よりも多くのコイルが載っているにも関わらずダブラーがない場合は並列です


並列フェーズのマザーボードの例




ASRock AMD B450チップ搭載 Micro ATX マザーボード B450M Pro4


2-3偽フェーズ型

こちらは以前ネットで少し話題になったフェーズタイプです
海外のユーザーが動画サイトで指摘していました
一般的な自作ユーザーがコイルの数=フェーズ数と考えていることに目をつけて
2つのコイルに対してローサイドx2ハイサイドx1という構成で2フェーズとしているようでした
高負荷時に重要なハイサイドを削っているので高負荷時には高温になる可能性が高いです


上記の結果から見てもダイレクトフェーズかつ多フェーズのマザーがより高い水準のVRMを持っており、次点でダブラー採用で多フェーズのマザー、貧弱VRMは並列で真フェーズが少ないものというような並びになる事は結果的には間違っていないと言えると思います

なぜ”結果的に”と書いたかというと
フェーズの数や電源回路の構成タイプ自体がVRMの性能を表しているわけではないということもわかってきたからです
確かに同じレベルのmosfetを同じ数使えばダイレクトフェーズ>ダブラ、並列のような並びになるでしょう
しかし電源回路構成タイプやフェーズ数以上に、mosfetの性能と数の方が電源回路の耐久力に対する影響力は強いので、500シリーズにおけるMSIのようにダブラータイプで真フェーズが多くても低品質なmosfetを使えば弱いVRMになりえますし、
逆にASUSのように並列でも高品質なmosfetを多数使えば強力なVRMになります

では400シリーズ以前ではなぜ並列に貧弱なVRMしかなかったのか
それはユーザー間に蔓延する2つの誤解があったからだと私は推察しています

フェーズが多ければ高品質だという誤解
そしてフェーズの数はチョークコイルの数を数えればわかるという誤解です

この誤解があるので、メーカーは「コイルの数さえ多くすればユーザーは勝手に高品質だと思ってくれる」とでも考えたのでしょう

そして低コストでコイルの数を増やせるのが並列回路だったので、並列に低品質なVRMが多くなり、並列=低品質という事になったのだと思います
某A社は300、400シリーズに於いて、ほぼすべてのマザーで低品質なmosfetを並列で並べており、一部のユーザーの間では高品質なVRMを積んだマザーを低価格で出してくれる優良企業という風潮が主に日本ではありました

500シリーズになって変わってきたのは300,400シリーズのVRMに関する情報が、海外ユーザーを中心に浸透しVRMフェーズの実情というのがバレつつあったからだと思われます
例えば、今まで多フェーズと思われたVRMでも実際は並列回路で2分の1以下のフェーズしか無いというようなことです
ASUSはそこに対し、並列で真フェーズが少なくても高品質にするというアプローチを取り
逆にMSIは低品質なmosfetをダブラーで多フェーズ化して「真フェーズなので高品質!」ということをしたかったのでしょう
残念ながらユーザー間において、フェーズの数自体がVRMの品質を左右するのではない、ということもすでに広まっていたのでMSIは
軽く炎上してしまいましたが、その炎上の結果MSIはX570 UNIFYという傑作マザーボードを出しました

ここから言えることはユーザー側が詳しくなればメーカーもまともな製品を作るということだと思います

※投稿時点での情報です